日々の雑感


by さむちゃん
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大石兵六夢物語

鹿児島を代表する菓子飴はセイカ食品の兵六飴だろう。昔からあり最近では関東のコンビニでも見かけるくらい有名な菓子である。そのパッケージにたいへん印象的なイラストが印刷されている。坊主頭のいかめしい顔の侍崩れが、裾をからげてふんどし姿で長太刀を持って歩いているちょっと奇妙な浮世絵風の絵である。

今までその絵の人物が誰でどういう由来があるのか特に気にも留めなかったが、たまたま図書館で手にした本の表紙に出ていたのでペラペラめくってみた。五代夏夫著「現代語訳・大石兵六夢物語」である。

この絵の武士は、鍛治屋町の下級武士であった毛利正直が1784年に著した「大石兵六夢物語」の主人公兵六である。型破りな武士兵六が、外城の吉野に現れるという妖怪を単身退治に出かけ悪戦苦闘をするという一種の滑稽本である。

笑いの許されなかった薩摩でこのような風刺・滑稽本が世に出て読まれたということは、時の藩主島津重豪の治世下であって初めて可能だったのだろう。天明期の武士道の衰えや風紀の乱れを憂え儒教精神にも触れている事からして武士道の本分を暗に説いているともいえる。

一方で庶民側から見れば、武士の体面を失い失敗をかさねる兵六に、武士階級に対する鬱屈した不満が解消される思いがしたのだろう。「島津の殿様の名前は知らないけれど大石兵六は知っている」といわれるほど読まれた本だったようである。

というわけで、この架空の人物ながら人気者の大石兵六を商標登録して菓子飴のパッケージに採用したところがセイカ食品の創業者の開明的なところだと思う。この兵六餅は1931年に初めて発売され、戦中戦後の一時期途絶えるも1949年以降はずっと売れているという超長寿商品だそうだ。在米中に兵六餅が送ってきたときは急に郷愁を覚えたことをいまでも記憶している。
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by attainmentofall8 | 2011-05-25 20:19 | 読書