日々の雑感


by さむちゃん
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羊と鋼の森

「羊と鋼の森」宮下奈都著
2016年本屋大賞受賞作品
タイトルだけではどんな作品かさっぱり想像もできないが、読み終えてなるほど納得するネーミングである。「舟を編む」三浦しをん著に似たところがある。「舟を編む」は、辞書編纂に精魂を傾け言葉の大海を漕いでいくような職人の世界を描いた作品だった。

「羊と鋼の森」は、調律師の話で、調律の蘊蓄が随所に出てくる。作中の外村はグランドピアノの蓋が開いたときに森の匂いを感じる。調律師の仕事の奥深さを象徴するメタファーとして森。そして羊は愚直に職を追求していく善と美の存在たる調律師のメタファー。善にも美にも「羊」が漢字のなかに含まれている。

ピアノは鍵盤を叩くと、ハンマーが連動して垂直に張られた弦を打ち、音が鳴る仕組みになっているそうだ。そのハンマーは羊毛を固めたフェルトでできている。つまり羊毛のフェルトのハンマーと鋼の弦がつまったピアノの内臓部を象徴したタイトルとも言える。

お客が調律師に言葉で調律の仕上がり具合を「チーズみたいな音に調律してください」と頼んだらどうするか、と外村とその先輩柳との会話がある。素人考えでは、ただ機械的に調律するだけかと思いきや、調律の奥深さを知る。

巻末の謝辞を読めば分かるが、調律師への徹底的な取材がなされた結果の作品だと納得する。
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by attainmentofall8 | 2016-07-28 23:29 | 読書