鳥追舟
2011年 04月 06日
薩摩川内駅の西口ロータリーに大きな石像がある。鹿児島の民話をもとにできた「鳥追舟」という能を記念した石像である。
鳥追いの舟(鹿児島県の民話)
むかしむかし、川内(せんだい)というところに、日暮らし長者という大金持ちが住んでいました。
この長者には、美しい奥方と二人の子どもがいて、姉はお北(きた)、弟は花若丸(はなわかまる)という名前です。
この長者の家に左近充(さこんじゅう)という男がいました。どういうわけか奥方をたいそう憎んで、主人に奥方の悪口をいうのです。
それが何度も何度も、いかにも本当らしく言うので、長者もだんだん本気にしてしまい、とうとう奥方を実家に返してしまいました。
それからまもなく、長者は左近充の世話で新しい妻を迎えたのですが、今度のお母さんは意地の悪い人で、お北と花若丸をいつもいじめていたのです。
あるとき長者は、仕事で長く京に上ることになりました。
ところがその間に左近充は、この継母(ままはは)とぐるになって、長者の家も財産も、そっくり自分たちのものにしてしまったのです。
かわいそうにそれからというもの、お北と花若丸へのいじめは前よりもいっそうひどくなったのです。
朝から晩まで休みなく働かされて、秋になってイネが実るようになると、まま母と左近充は二人に一日中、鳥の群れを追いはらわせました。
お北と花若丸は小さな舟にのせられ、鐘や太鼓をたたいては川を上ったり下ったりして鳥を追うのです。幼い二人にとっては、とてもつらい仕事でした。
ただ唯一の頼みのお父さんは、なかなか戻ってきません。
二人はいつも、「母さまが、いてくれたら」「父さま、早う帰ってきて」と、泣きながら、次の秋もその次の秋も、烏を追って暮らしたのです。
継母と左近充の毎日のいじめと、いつまでたっても帰ってこない父に二人の子どもは絶望して、
「母さま、父さま、もう疲れました。ごめんなさい」と、とうとうある日、二人はしっかりと手をつないだまま、川に身を投げて死んでしまいました。
あわれに思った村人たちは、二人の亡骸(なきがら)を川の近くに手厚く葬ってやりました。
さて、それからまもなく、長者は長い旅から帰ってきたのです。
しかし、やっと帰ったと思ったら二人の子どもはおらず、家と財産は左近充と妻の物になっています。
「この有様はなんじゃ! なぜ、こんなことに!」「長者さま。実は・・・」
村人からすべてを聞いた長者は、怒りに怒って、左近充と妻を刀で斬り殺しました。
そして、二人の子どもが葬られた川のほとりに腰をおろして、
「すまんかった。金儲けに夢中で、帰るのが遅くなったばかりに。・・・お北。・・・花若丸。いまから父も、お前たちのそばへ行くぞ」
自分も自らの命を絶とうとしたその時、長者の耳に、二人の子どもたちの声が聞こえてきたのです。
「父さま。お帰りなさい。わたしたちは、木に生まれ変わったの。どうか、わたしたちの木を育てて」
その声に目を見開いた長者は、川のほとりに二本のタブの木が生えているのを見つけました。
「そうか。お前たちは木になったのか。よし、父が必ず、お前たちを立派に育ててやるぞ」
やがて二本の小さなタブの木はどんどん大きくなり、二本が四本に、四本は八本にと、しだいに林となり、ついには大きな森になったのです。
村人たちは死んだ二人の子どもの事を思い出して、この森を『鳥追いの森』と呼び、小さな観音さまをたててやったそうです。
この森は太平洋戦争のときに爆弾を落とされて、すっかり焼けてしまいましたが、観音さまは今でもひっそりと残っているそうです。
能「鳥追舟」
薩摩の国の日暮某(ワキ)は訴訟の為上京し十数年になる。
留守を預かっていた家臣の左近の尉(ワキツレ)は、主君の子の花若(子方)に田の鳥を追わせようとする。花若の母・領主の妻(シテ)がそれはあまりに情けないと止めると、追わないのなら母子とも家から出て行けと言われてしまう。仕方なく母子は鳥追舟に乗り涙ながらに鳥追いに出かける。帰国した日暮某はその様を知り左近を斬り捨てようとする。しかし、妻に「長年妻子を捨て置いた 貴方の咎でもあるのです」と止められて赦す。その後 家は栄えたという。
Commented
by
マテロングあい子
at 2011-04-11 06:49
x
今度の県議選。薩摩川内地区は原発問題で大変でしたよ。反原発の方も当選しました。帰ってたらどこに住むの?市内荒田の辺りは坪80万円位するから、郊外が良いと思いますよ。
0
Commented
by
attainmentofall8 at 2011-04-11 08:18
今後の政治の争点の一つになりますね。原発自治体であればなおさらです。坪80万??バブルみたいですね。
by attainmentofall8
| 2011-04-06 21:46
| 映画/落語/芸能
|
Comments(2)