人気ブログランキング | 話題のタグを見る

日々の雑感


by さむちゃん
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

中村紘子さんのピアノ

東京交響楽団のニューイヤーコンサートに六本木のサントリーホールまで行ってきた。ピアノが中村紘子さんということで楽しみにしていた。

ヨハンシュトラウスの喜歌劇「こうもり」序曲作品367から始まった。次にチャイコフスキーのピアノ協奏曲で中村さんが登場するとものすごい拍手で出迎えられた。座席はオーケストラの真後ろで指揮者と正対する二階席である。ピアノは指揮者の斜め後ろ、ステージの真ん中前方に置かれていて、鍵盤と指の動きがよく見える。

入場するところからオーラを発しているような貫禄のある姿には圧倒された。そしてピアノの前に座るやいなや、一瞬ピーンと張りつめた静寂を破るようにピアノを奏で始める。緩急強弱、自由自在に指が鍵盤の上を這いまわるように動く。30分ちょっとの曲であるが鍵盤にくぎ付けという感じで目が離れないのにはまいった。終わった時には緊張から肩がパンパンになっていた。

拍手が鳴りやまずアンコールの催促である。織り込み済みではあろうが、終わるたびに呼び戻されて結局3曲弾いてくれた。こんな目の前で見るのは初めてだったので、これが中村紘子の超絶技巧かと感嘆頻りだった。

途中休憩の後、ドボルザークの「新世界より」を40分たっぷり堪能した。当然ではあるがCDなどで聞く音とは迫力が全く違う。前身をゆすられるような響きが体中に伝わるのを感じる。他人事ながら、トロンボーンの前にいるファゴットの奏者は耳がやられてしまうのではと心配になった。

僕が中村さんに注目するようになったのは、何かの本にピアニストは「肉体労働者」と書いてあったのを見て驚いたときからである。彼女は今でも毎日5時間はピアノを弾く練習をしているそうだ。

ある研究によれば、どの分野においても卓抜した知識技量を身につけるには、一日3時間、一週間に約20時間、20歳までに1万時間という必要最小限の練習時間が不可欠だそうだ。労せずして一流になった者はいなかったし、懸命に取り組んで一流に割って入れなかった者もいなかったという。さらに世界的レベルでの熟練がそれより少ない時間で達成された事例はなかったそうだ。

もちろん1万時間という数字は、自分一人での達成は不可能であろう。小さい時ほど親兄弟などの周りの協力や励まし、経済的豊かさなどの幸運にも恵まれなくてはならない。それ故に、俗に天才、一流と言われる人たちは、メンタル的にも環境的にも恵まれた機会を持った幸運な人なのかもしれない。
名前
URL
削除用パスワード
by attainmentofall8 | 2011-01-09 20:55 | 映画/落語/芸能 | Comments(0)